ザ・フォーリナー/復讐者(監督:マーティン・キャンベル)でジャッキー演じるのはジェイソンがランボーか? ※ネタバレあり

このジャッキー扮するクァンですが、初めははしゃぐ娘を諫める少し堅物な父、そして何かと子供を心配して気にかけ、親娘ともども爆破テロに遭って娘を亡くして落ち込む姿までが描かれます。典型的な東アジア人描写は幾つかあると思います。所かまわず騒々しい言動で喚き散らすタイプや、外のコミュニティの人間に対して頑なに排他的な態度を崩さないタイプもありますが、欧米社会に馴染めずぶっきらぼうなタイプも散見され、今回は最後のタイプかな、と思わせる見せ方です。実際、初めはおとなしそうな物腰で警察や政治家に会いに行きますが、警察ではテロ対策を担うブロムリーに定型文で追い返されたり、政治家には門前払いや待ちぼうけを食らい、対応に不満を感じて次第に自分の目的に最短距離で進もうとします。当初はその態度を皆、頑固な中国人くらいにしか感じていないのですが、居座りやアポなし訪問を経て、ついには屋敷のトイレに手作り爆弾を仕掛けて爆破させます。この時点でやっていることは程度の差はあれど爆破テロ組織と何ら変わらないのでは…、と感じますがそこは主人公補正です。しかし一見被害者のヘネシーも、実は過去にそのテロ組織に属していて、今は袂を分かって政府側にてどちらにも顔が効くという複雑な立ち位置で、テロ組織の言い分や大義は分かるものの保身のためには事を荒立てたくないという苦難も明らかになります。

片やクァンはここから、クァンの潜伏るとアパートを襲撃したヘネシーの手下をなんとか退治して逃走、農場に逃げたヘネシー一家を夜襲して手下を縛り上げたうえで再び爆破、ヘネシーの愛人マギーとの密会現場を激写、森に身を隠すクァンを追撃に来たヘネシーの手下をトラップや格闘術で返り討ち、といつもヘネシーよりも上手をいきます。老いて怪我も癒えぬ老人風情だった姿も、若干のリハビリトレーニングののちに冷静な戦士のそれに変貌を遂げます。どこで聞きつけたのかヘネシーの行方を突き止めたり、どこから手に入れたのか追っ手を感知するトラップの材料や部品なども準備に抜かりがありません。

一方ショーンは、爆破テロは末端組織の独断によるもので、一般人を巻き込んだ結果は組織全体の本意ではない事を突き止め、犯人のあぶり出しを企てます。方法はというと、末端にそれぞれ別の合言葉を伝え、過激なテロを実行した際の声明で実行犯を突き止める、というものです。

しかしそんな中、ヘネシーのもとにクァンが現れて業を煮やして銃を突きつけます。もう後がないヘネシーは次のテロ行為で実行犯をあぶりだす策があるからそれまで待つよう伝えて九死に一生を得ます。にも関わらず、次に起こったテロは犯行声明に合言葉は使われていませんでした。結局、合言葉の作戦は情報が漏れていたのでした。八方塞がりになったヘネシーでしたが、ここで様々な謎が一気に明るみに出ます。ヘネシーの妻メアリーは、ショーンと出来ていてそこから合言葉の情報を聞き出し、武器調達係のマクグラスが内通者となり実行犯に情報を流していました。実行犯には愛人マギーもいるとのことで、ヘネシーの周りは嘘つきだらけだったと判明します。

一方、ショーンはクァンの始末を命じられて森に向かわせますが、ショーンは返り討ちの上縛り上げられてしまいます。実行犯の正体を明かしたお陰で生かされた彼は、格の違いを見せつけられて解放されるという散々な目に遭いました。

程なくクァンはいつの間にかロンドンの、テロ実行犯潜伏先を突き止めて、ガスの点検を装い潜入からの襲撃により、一味であるマギー(こと、サラ)を瀕死に追いやり、実行犯の男4人を37564にしたところで、本来実行犯を襲撃しにきた兵士たちに見つかる前にその場を立ち去ります。そして今度はヘネシー宅に現れ、彼とマギーの密会写真をネットに拡散させます。ヘネシーがテロ実行犯と懇ろだったと公になることで、ヘネシーは失脚し、クァンの復讐は完了したという訳です。

戦いを終えたクァンは指名手配の憂き目に遭いますが、何とか自分の店に戻り、店を任せた従業員のラムと暗がりの中無事を確かめ合いますが、彼にレーザーポインタが灯ります。ブロムリーは彼の帰りを待ち構えていつでも狙撃できる準備を整えていたのでした。しかし彼は狙撃を見送り、クァンを見逃して一言、「あえてドラゴンを起こすこともない」とつぶやくのでした。